大学生へ向けて

TOP > 更新日:2005年2月5日

楽しむ,モチベーションをもつ,勉強をする,自分で考える

 大学生のみなさんは,大学ではこれについて勉強したい,大学で自分のやりたいことをみつけよう,というような希望をもって大学に入学してきていると思います.しかし,自分の思い描いていた理想と現実を比較してみるとどうですか?思い通りにいっていなかったり,周りに流されて理想とは違っていても今の状況に満足してしまっている人が多いのではないかと思います.

 私は,大学時代に様々なことを吸収し,身につける必要があると考えています.サークル活動では他者との中で協調しつつもいかに自分という個性を表現できるかを身につけることができると思いますし,アルバイトではお金を稼ぐことの大変さ,社会的一般常識や礼儀というものを学ぶことができるでしょう.

 しかし,これらを行いつつも大学生としての本分は「勉強をする」ということであり,「勉強をする」ことに生活の中心をおく必要があるとも考えています.大学を卒業すれば,みなさんは技術者になったり,研究者になったりと就職して,それぞれの分野で何十年と働くことになります.そこでの基礎となるものを大学で身につけるために,地道な「勉強」は必要です.

 自分の仕事に興味をもち,高い「モチベーションをもつ」ことができれば,仕事を「楽しむ」ことができます.この「楽しさ」は友達とワイワイやるような楽しさとは違います.自分の興味のある分野で大目標を設定し,それを達成するための小目標を設定して,それを一つずつクリアしていって,最終的には大目標をクリアする達成感,未知の事柄を解決していく充実感を味わうことができます.どうせ働くならただお金を稼ぐだけでなく,仕事を楽しめたら充実した日々が送れると思います.

 この「楽しさ」を感じるためには,まず,様々なことに興味をもち,自分が本当に面白いと思えることを探すことです.世の中にはまだまだ未解明なことや,やらなければならないことがたくさんあります.インターネットが活用できるようになった現在では,自分の方から能動的に簡単に情報収集を行うことも可能でしょう.

 次に,いったん興味をもったことについては,継続的に一生懸命「勉強する」ことです.いくら興味があることでも,本気で勉強しようとすると必ず辛いこと,大変なことはあります.その困難を乗り越えないと単なる趣味で終わってしまうし,その先にある「楽しさ」を味わうことはできません.

 みんな人間です.怠けたいときや,逃げ出したいときは誰にでもあるでしょう.しかし,今の自分の実力よりもちょっと難しいことに挑戦し,苦しいときにもうちょっとだけがんばることで,人間は自分の限界を引き上げることができます.人間の限界は案外遠くにあるものです.

 ここまでがんばらなくても,抜群に才能があるか,または抜群に運がよければ,問題ないのかもしれません.しかし,私も含めてほとんどの人にその能力はありません.では,我々一般人がもてるものは何か?それは,「努力するという才能」です.我々のもともともっている能力は生物学的に見てもほとんど変わりません.人より一歩でも努力することで,人とは違う「何か」を手に入れることができると思います.

 みなさんは学生です.今は未熟であっても構いません.ただ,今の自分にできる精一杯で自分のやりたいこと(本分)に取り組まないと,「あのときああしたらよかった」,「こうしていれば今頃は...」,というように必ず後悔します.人生に「たら」,「れば」はありません.「あのときの自分の精一杯を出したんだから仕様がない,次にはこうしよう」,というように後悔ではなく反省ができれば,さらに前進することができます.

 以上のようなことを行うためには,周囲の環境も重要です.人間はまわりに影響されやすく,環境によっていくらでも変わってしまいます.研究に対しても,教育に対しても,常にこのようなことが実現できるように気を配りながら,「学生が本気で研究できる」環境作り,研究室作りを行っているつもりです.学生どうし互いに刺激し合えるライバル関係も重要です.

 偉そうなことを言っている私もまだまだ若輩者で未熟ですが,毎日今の自分の精一杯を出し,今の仕事を楽しんでいるつもりです.何事も毎日継続するのは大変なことですが,常に高いモチベーションを持ち続けることができれば可能なことです.モチベーションは何か?世界中で誰も知らないことを発見したり,世界中のみんなに喜んでもらえるようなものを開発したりと,研究というもののピュアな楽しさに私の場合はあると思います.研究を行う上で重要なことは,学生が「自分で考え」,「創造する」ことです.これは大学生のみなさんには常に意識してもらいたいことです.自分の頭を使って考え,自分の手を汚してチャレンジするという,泥臭さが必要だと思います.蓮の花は,泥水を吸わなければ,きれいな花を咲かせることはできないのです.


TOP >
Copyright (C) 1997-2005 Toshihiko Shiraishi